秋の一コマ・聖トリニティ・カレッジその２

氷月祭プレＳＳその４、再録・加筆修正済です。

―――昼休み。
それは生徒・先生の身分に関係なく、一時の自由を楽しめる時間。
聖トリニティ・カレッジでもそれは同じで、スクール側の一画にある国語科研究室では、３人の教師が昼食を終え各々のやりたいことをやっていた。
そこへ、ノックの音が響き、彼らの教え子たちが入ってきた。
「フラウ先生。お聞きしたいことがあるのですが」
来たのは高等科でも有名な、生徒会所属の４階生の３人。その中で、肩よりやや長いめの金髪を緩く結わえた知的な雰囲気の少年が、同じ金色の髪の教師に声をかけた。
「おう、ハクレン。何だ？」
火のついていない煙草を銜えながら、雑誌をめくる手を止めず金髪の教師…フラウは応えた。
だが、質問が飛ぶ前に彼に付き添ってきた、彼とよく似た空気を持ちながら精悍な顔立ちの少年が苦笑して友人を諌めた。
「やめといた方がいいって、ハクレン。どうせロクでもない答えが返ってくるに決まってるぞ」
「聞く前から答えを決めつけてどうする。ミカゲ」
「そりゃあ、そうだけどさぁ。なぁ、テイト？」
ミカゲは同意を求めるように、黒髪に翡翠の瞳を持つ中性的な美貌の少年――テイトを見た。するとテイトも、険しい顔をしつつ二、三度頷き返した。
「あんまり信じたくはないけど……今回はオレもミカゲの言う通りだと思う…」
「ほら、やっぱり！」
「何を言う。先生の趣味がアレでも、そんなわけがないだろう」
フラウの持っていたカムフラージュされた雑誌を指さすハクレン。
何故ここでそうくるのか流れがわからない３人は不可解な顔をしたが、雑誌の件については、同僚たちは心の中で大いに賛同を示した。２人とて、今では慣れてしまったものの、出会った頃は同じことを思い呆れたものだ。
しかし、それが伝わったのだろう。ジト目で睨んでくるフラウに、同僚たち…ラブラドールはにっこりと笑みを浮かべ、カストルはずれた眼鏡を直しながら呆れを含むため息をついた。
「さっきから随分な言われ様だね。フラウ。理由はよくわかるけど」
「まぁ、これも日頃の報いでしょうね。自業自得でしょうが」
「俺には、お前らの方がヒデェと思うんだがな？」
「「気のせいでしょう」」
満面の笑みを浮かべて声を揃えて否定してみせた友人たちに、フラウは思わず絶句した。彼らの性格をわかってはいたが、こうして改めて直面すると、自分でも何故友人でいられるのか不思議で仕方がない。
フラウが黙った隙に、カストルは大人しく待っていた生徒たちに話しかける。
「それで、ハクレン君。テイト君とミカゲ君も。一体フラウに、何を聞きたいんですか？」
「至極簡単な質問です。憧れの人に、一度は聞いてみたい質問ランキング１位に見事輝いたくらいのものですから」
回りくどい前置きの後、少しだけ間を置き、ハクレンは意を決して尋ねた。

「なぜ教師になろうと思われたんですか？」
「最初に見たエロビデオが教師モノだったから」

ピシリ。張りつめた空気が、一瞬にして真冬の南極のように凍りついた。
「って、じょうだん…」
「ほらな。俺達の言った通りだっただろ」
「おい、コラ」
「フ、フラウ！それでも先生なのか？！普段アレだけど、でも違うと思ってたのに、見損なったぞ！！」
「こりゃあ、オウカには言えないよなぁ」
「ありえるとは思ってましたが、やはりそうでしたか」
「あのぉ、もしもーし…」
「そ、そんな……」
「ハクレン君。ショックだろうけど、これが現実なんだよ」
「って、お前ら！いい加減冗談だって気づけよ！！」
『あれ？冗談だったんだ（ですか）？』

同僚はともかく、養い子や教え子にまで言われる俺って、ホントどう思われてるんだろう…。
ふと、そんなことを考えてしまったフラウであった。

木曜日の日常的幕間
～教師トリオと縁ある教え子たち～

７Ｇ編でした。司教組が先生で、お子様組が生徒です。
ミカゲとハクレンは主従同士でテイトとは幼馴染だけど、事情があってテイトが引っ越したことで何年か音信不通になってしまって、その彼が偶然この学校に転校してきたので２人と再会したとか。
実はテイトは、巨大な富を持つバルスブルグ家と唯一拮抗するラグス家の一人息子であるが、色々と危険が迫ったために、クロイツさんからジオ様経由で、フラウに預けられ寮生活しているとか。
アヤ様たちバルスブルグ家派とフラウたちラグス家派で、水面下の戦いが起こっているとか。
そんな裏設定が隠れていたりします（ォィ
ちなみに、スクール側の生徒会長はオウカちゃんです。副会長がハクレン。ミカゲは会計で、書記に転入したてのテイトを引っ張り込んだとか(笑)