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ここは、「鏡幻屋」コラボパラレル作品『学園都市《天華》』の、長編及び各学園や島内で起こる日常の小ネタなどを置く、小説広場です。
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氷月祭プレSSその3、再録・加筆修正済です。




期末テスト前といえば学園内に緊張が走り、生徒たちに焦りが見え始める頃。
普段勉強しておけばよかった、時間が足りない、追試は嫌だっ…etc. 尽きない悩みは生徒たちに容赦なくストレスを与え、体にも影響を与えていく。
それを解消するために、今、1人の生徒が立ち上がった……!!


アッシュフォード学園高等部には、学園内外を問わず、特に高い人気を集める1人の「姫君」がいる。
その名を“ルルーシュ・ランペルージ”。
教師すら一目置く明晰な頭脳でどんな教科も(体育以外)常に学園内トップの成績を誇り、生徒会執行部副会長を務める生徒だ。
その容姿は、濡羽色の艶やかな黒髪に、最上級の宝石を思わせる紫の瞳。最高の人形師が作ったかのような、男とも女ともつかない中性的な顔立ち。新雪の如く肌理細かな白い肌とすらりと細い身体は、端麗という言葉でも足りないくらい。
スカートから覗く真っ白な肌がなんとも艶めかしく、女子生徒はもちろん、男子生徒や教師すらも授業中だというのに始終視線を向けてくる。
だが、いくら仲間内で鈍感と呼ばれていようとも、朝から続けば気がつく。いい加減鬱陶しくて仕方のなくなった『彼女』は苛立ち紛れにため息をついた。
「…もう、いい加減に止めないか」
前で授業する教師に気遣い小声で言うのに対し、隣に座っていた『彼』は、小さな子供へ諭すように言った。
「あら、ダメよ。主役は最後までいなきゃ」
「だからって、これじゃあ授業にならないだろうが!!」
怒りに達した『彼女』…ルルーシュの、悲鳴に近い叫びが教室中に響き渡った。

アッシュフォード学園は現在、「姫君と騎士」と銘打った、お祭りの真っ最中だった。
各界良家の子息子女が多く通うこの学園はお祭り好きとしても有名であり、こうして生徒会主催で不定期に色々なことが日常的に行われている。今日のこれもまた、生徒会長の思いつきで急遽開催が決定されたものの1つだ。
その最たる被害者…もといルルーシュが着ているのは、高等部女生徒用の制服。
細身のジャケットに、黒のミニタイトスカート。足には保護者その2…もとい居候人であるC.C.からのリクエストで、黒のオーバーニーソックスを着用している。
対する会長のミレイ・アッシュフォードが着ているのは、同じ高等部の男子用制服だ。
ただし細身のシルエットのため胸のあたりがキツイのか、黒の詰襟を寛げ随分と開放的に着こなしている。ただしルルーシュとは違い、集中する男共の視線を一度たりとも気にしないのが、ある意味彼女のすごい所だとルルーシュは思う。
「落ち着いて、ルルーシュ。気持ちはよーくわかるから」
うんざり顔でミレイの反対側から窘めたのは、同じ生徒会メンバーのカレン・シュタットフェルト。
こちらもミレイと同じ男子用制服を着ているが、彼女と違い詰襟をきっちりと止めて着ていた。清楚さが評判の彼女も人気が高く、男装姿の隠し撮りの写真が普段より多く見つかったのは後日の話だ。
彼女らとルルーシュの役割と性別が逆転しているのは、理由がある。
この祭りは、男子生徒は事前に決めたパートナーとなる「姫」=女生徒(相手がない場合はくじ引きで決定)に、今日一日騎士となる誓いを立て、その隣で授業を受けられるというものである。
だが、ランぺルージ兄妹やミレイたち執行部メンバーのように人気が高すぎる人間は、別だ。
彼らは学外でも人気が高過ぎる故に、いつだって恐ろしい事態が起こってしまう。そのため、あらかじめ執行部で該当者のパートナーを決め、それを事前に学園中に披露し、牽制しておくことで収めようとしたのだ。
では、何故彼らだけが性別逆転しているのか。
実は、ルルーシュはこう見えて、世界五大強国の一つであるブリタニア帝国皇家の一姫君だ。
そしてミレイ・カレン両名は、そんな彼女のクラスメイト以前に幼馴染兼騎士である。
なので、体力のない上に無駄に人気がありすぎる主を守るため、普段男装する彼女を本来の性別の性別に戻ってもらって「姫」とし、2人は動きやすいよう男装することで、本来の使命を果たせるようにしたのだ(ルルーシュを姫にした方が面白いから、という理由では決してないとミレイは後に語っている)。
「なによカレン。これも来週から始まる期末テストを前に焦って大変な生徒たちとかルルちゃんとか、ちょっとでも息抜きしてもらおうと思ったからこその計画よ?」
「その前に、一昨日、学園をハロウィン一色にして大騒ぎしたのは忘れたんですか」
「いいじゃない、ルルーシュ。あれはあれ、これはこれっ」
「息抜きはわかりますけどっ。何をどうしたらこうなるんですか?」
「あら。ルルちゃんの眩しい制服姿は、癒しにならないと?」
「なるならないで言えばこれ以上というくらいに癒しですが、それとこれとは別です!第一、もったいないじゃないですか!!
いつものおとなしいお嬢様の仮面はどこへ行ったやら。カレンのぐっと拳を握って力説する姿に、論点が違うと思わずルルーシュは突っ込みかけた。
「は~い、そこっ。今は授業中なんだけどなぁ」
そこへ、口を挟んできた者がいた。
飛んできた方向を見れば、教壇に立つ1人の青年。白衣を纏い、眼鏡のメタルフレームを知的に光る姿から、教師であると一目でわかる。
そう――お忘れの方もいるが、今は授業中なのだ。
この馬鹿騒ぎを止められるのは、もはや彼1人。ルルーシュは期待を込めて、教師を見た……が。
「まぁ確かに、カレン君の意見はもっともだよね~!」
…期待するだけ無駄であることを、思い知っただけだった。彼の名は、ロイド・アスプルンド。世界から注目を集める稀代の科学者でありながら帝国軍に席を置き、変人と名高きその奇妙な性格でも有名な、ブリタニア帝国伯爵の一人である。
そして、そんな彼は、とんでもないルルーシュ信奉者でもあった。
「諦めろ。アスプルンド先生の性格考えたら、言うだけ無駄だし」
「っつーか、最初から授業らしい授業じゃなかったしな」
「……お前たちなぁっ」
落ち込むルルーシュに声をかけたのは、前の席に座る2人の生徒だった。
1人は、セピア色の猫毛を腰くらいまで長く伸ばした、ルルーシュに負けずとも劣らぬ美貌の少女。
もう1人は、色素の薄い茶色の髪に、少女とも見間違うくらいの愛らしい顔立ちをした、少年。
2人とも、ルルーシュと同じ寮のクラスメイトで、学園内では何かと話題に上がりやすい有名人だ。
「昶、后。お前たちは、そりゃあいいだろう。いつもと変わらないように、2人で組んだんだからな」
不機嫌も露に、ルルーシュは文句を言う。
何しろ、この話が出た途端に、2人はその場で即行ペアを組んだのだ。
「だって、下手に誰かと組むより昶の方が、一緒にいても周りがうるさくないし」
「オレもだ。賢吾が犬にしてくれ、って頼んできたけど、アイツとずっと一緒はウルサイからな」
「いやいや!『犬』じゃなくて『騎士』だから!!」
いくら普段がアレでもさすがに可哀想だ、という后のツッコミに、昶は聞かなかったフリをした。
「でも、この2人に関してはこのペアで正解かもしれないわね」
「カレン…そりゃあまぁ、そうなんだが」
「ルルーシュ様もそう思いませんか?このクラスで2人が組めそうな人間と言えば、他は伊達か帝人ちゃんしかいないんですよ?」
真剣に言うカレンに、ルルーシュたちは今この場にいない級友2人を思い浮かべた。
2人とも彼らと同じ程人気の高い人物で彼らに下心を一切もたない貴重な人物達だが、残念なことに2人には組むべき相手がいる。
「そうねぇ。でも伊達君には幸ちゃん、帝人ちゃんには平和島先輩いるし。でも、昶ちゃんも后君もこの容姿で人気高いから、変に誰かと組めないものね。それに、昶ちゃんはワケありだし、后君は弟君とか安倍先生とか色々怖いし?」
ミレイの言う通り、彼らの事情を考えると、確かに当たりだったかもしれない、とルルーシュも思う。
昶は、学園OBにして3代前の生徒会メンバーである劉黒と焔緋の最愛の妹で、密かに護衛もつけられている身だし、后もこう見えて闇春国の次期王位継承者で、異常なまでのブラコン愛と師弟愛に悩まされる災難の真っ最中(本人談)なのだ。
そんな彼らが彼らや生徒会以外の誰かと組んだら最期、どんな犯罪の数々が行われるだろうか、予想がつくだけに後が怖い。
仕方ない、と諦め、授業が早く終わることをルルーシュが望んだ、その時。
「「会長!もう十分でしょう?!」」
そう言って飛び込んできたのは、癖がついた茶髪の少年と、人工的な金髪の少年だった。
教室に入るなり、彼らは一直線にミレイの方へ詰め寄った。
「洒落になりません!!ずっと彼女と一緒なんて!!」
「っていうか、俺の命がいくつあっても足んないです!!」
鬼気迫る形相と泣きそうな顔で交互に言われたミレイは、困惑しながらも確認した。
「えーっと、確かスザク君はユフィの騎士で、賢吾君は綾の騎士役だったわね」
「そーなんスよ。綾ってば、何かあるとすぐ竹刀で殴ってくるんです~。ありゃ、鬼ですよ、鬼!!」
「僕がいくら正式にユフィの騎士を拝命してるからって、何もこんなイベントの時まで一緒じゃなくてもいいじゃないですか!僕だってルルーシュの騎士が良かったですよっ。ルルーシュの細腰とか生足とか一日ずっと見てたかったし、大体僕以外の目にこんな襲ってくださいみたいな格好を晒すなんてやっぱり反対してたのにイタっ!!」
ルルーシュに視線をやりつつもスザクが不満を言い終える前に、スコンと何かが頭に当たって床に落ちた。
見下ろすと白いチョークが、床に落ちた衝撃で真っ二つに折れていた。
「スーザークー君?」
スザクが拾おうと思ったその直後、不気味な呼び声とともに、2本、3本と次々にチョークの雨が彼に降り注ぎ始めた。
「調子に乗ってると親に訴えられない程度にいじめるよ」
「痛!チョーク投げないで下さい!すいません、痛っ」

「え、ちょっと、俺まで巻き添えとかあり得ないンすけど?!」
横にいた賢吾にまでチョーク攻撃がおよび、慌てて頭を両手でカバーするが、相手は教師兼軍人。隙を縫って百発百中で体中に当ててくる。
「スザク、賢吾!!おい、ロイド…じゃない、先生!!」
「あはぁ~。イジメじゃないですよ?ルルーシュ様の艶姿を視姦した罰です」
「あらまぁ」
「…賢吾、成仏しろよ」
「って、昶は止めてやらないのかよっ」
「あれ止められるものなら、后が行ってくれば?」
「いいじゃない。むしろ、もっとやってやりましょう!」
「カレンさん?!」
ギャラリーが騒ぐ間にも、容赦のないチョーク攻撃は続く。床はとうに真っ白だ。
しかし、その手を止める勇気ある者がいた。
「ロイド先生、それじゃあ体罰になってしまう上に、証拠が残ってしまいます」
「えー、そうですかぁ?」
「な、ななりー…っ」
「ナナリーちゃぁん!」
ふわふわの亜麻色の髪を二つに結い、高等部の男子制服を着た、笑顔が愛らしい少女。ルルーシュの妹であるナナリーだ(中等部である彼女が何故高等部の服を着ているかというと、それはもちろん兄の制服を他人に渡さないようにするためである)。
主の何より大切な妹君の命とあれば、ロイドは逆らえない。
ようやく止まった攻撃に、スザクは本当に天使が来たのかと思った――が、現実はそうではなかった。
「それより、ユフィ姉様(こんやくしゃ)とか神楽耶さん(いとこ)とかに言いつける方が、効果ありますよ♪」
「あぁ!な~るほどっ」
「あーあーっ、それだけはやめて~!!」
またしても、ガラリとドアが開かれた。
あら。私を呼んだ、ナナリー?
おや、スザクじゃない。奇遇よね
入ってきたのは、ピンク色の髪をした柔らかな笑顔の女子生徒と、気が強そうな印象を持つ黒髪の女子生徒の2人。
「ゆ、ユーフェミアさま……神楽耶……っ」
「ウフフ。躾の悪い犬には、お仕置きが必要よね」
「色ボケも大概になさいませ。我が国の恥ですわよ」
青い顔をして慌てて姿勢を正したスザクに、2人はにこりと笑いかける。
普段なら心温まる笑顔も、今この瞬間は彼女たちの背後にドス黒い空気が見えて、怖い。
隣にいた賢吾も思わず顔を引き攣らせ、後ろに一歩引こう…として、誰かにぶつかった。
あぁら、あたしもいるんだけど?サボリ魔さん
「げっ、綾?!な、なんで…」
「何でじゃないわよっこのボケ!柩木君に便乗して逃げやがって!!」
「ご……ごめっ、いや、ヤメ……!!」
暗雲の立ち込める一画を少し離れたところから眺め、ルルーシュはため息をついた。
渦中にいるナナリーを迎えに行ったミレイとカレンが、ドサクサに紛れてスザクを攻撃しているのは見ないことにする。
「何て言うか、この後は授業どころじゃなさそうですね」
「うわぁ、楽しそうなことになってるね」
聞き覚えのある二種類の声に、ふと顔を上げた。そこにいたのは、呆れた顔と面白そうと輝いた顔という両極端の表情をした、妹の同級生たちだった。
「シエルに、言。ナナリーの付き添いか?」
「…えぇ。昼食をご一緒したいからルルーシュ先輩のところへ行かれるということでしたので。もう昼食の時間ですよ?」
「兄さん。僕らも一緒にご飯食べよ♪」
「おっ、言!そういや、さっきチャイム鳴ったっけ」
「だな。伊達は帰ってこないだろうけど、帝人はそろそろ帰ってくる頃だろ。それ待って一緒に飯行くか」
嬉しそうにする義弟に后が言った時、後ろの扉が開いて、疲れ切った顔のクラスメイトの少女が入って来た。
「ただいま~」
「お帰り、帝人。お疲れさん」
「お疲れ。3年の授業はどうだった?」
「それが、授業になんなくてさ。静雄さんのクラスにいたのに、臨也さんが乱入してきて、大乱闘だよ」
「「「やっぱり」」」
「やっぱりって何?!っていうか、それがわかってて黙ってるかな?!」
「平和島先輩と組ませられるのは、従妹のお前しかいないからな」
「折原先輩の帝人への執着強いから、やると思ってたけどさぁ」
「ってか平和島先輩のとこなら、帝人いなくても、あの人面白がって行きそう」
満場一致で頷かれ、帝人はがくりと肩を落とした。すかさずルルーシュが慰めるために、背中を軽く叩いてやる。
そこへ、ナナリーたち3人がようやく帰って来た。
「お兄様、お待たせしました」
「さぁって!ランチタイムにしましょうっ。お疲れ様、帝人ちゃん。今日は帝人ちゃんの分も用意してるからさぁ」
「って、作ったのはオレとナルトとセバスチャンですけどね」
「我が君の手作りっ、嬉しいです!!」
「あぁ、それで双子が『今日は一緒~』みたいなこと言ってたんだ。早く行かないと、待ちくたびれてるかもね」
「ようやく、昼飯か。午後からもよろしくな、后」
「おぉ。その代わり、せいめ…じゃなくて安倍先生の授業、助けてくれよなっ」
「兄さん、やっぱり晴明、殺してくるよ?」
「もうちょっと穏やかにしてくださいね、主神様」
こうして、9人は昼ごはんのため、教室を出て行った。暗黒の一画はまだ残っているが、他のクラスメイトたちは誰も気にしていない。
いや、慣れたという方が正しいのだろう。何しろ、これが彼らの『日常』だから。

そうして、今日もアッシュフォード学園の昼休みは、いつも通りに過ぎていくのだった。


退屈混沌水曜日
~洒落にならない祭難台風~


AF学園・高等部サイドでした~。ここかナルさんとこを書くと、かなり賑やかになります。
学年の設定としては、
高等部3年→静雄・臨也など、2年→ミレイ、高等部1年→ルルーシュ・カレン・昶・后・帝人とか
中等部3年→ナナリー・シエル・言、2年→エルリック双子
シエルについては本来1学年下ですが、特別措置で3年になってます。
なので、ほぼメインに書くのは、ここか陽炎学園の方かどっちかになりそうです…;



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