ここは、「鏡幻屋」コラボパラレル作品『学園都市《天華》』の、長編及び各学園や島内で起こる日常の小ネタなどを置く、小説広場です。
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氷月祭プレSSその2、再録です。
――ここは、教皇庁領はミラノにその本部を置く、聖トリニティ・カレッジ。
今日も、立派な聖職者を目指す若者たちが、日々の勉学に励む・・・・・・
「しゅ、取材、ですか?」
2年生のエステルは、突然の申し出に、目を丸くした。
「ええ。今度、受験生向けのパンフレットで、本校の学生生活について特集することになりまして。そこで、全校を代表して、あなたの今日一日の学校生活を、取材させていただきたいんですの。いや・・・・・・かしら?」
「い、いえ、嫌ってわけじゃ・・・・・・」
エステルが困ったように目を泳がせると、依頼人――校長カテリーナ・スフォルツァが秘書、ケイト・スコットは、ニッコリ笑って言った。
「では、今日は一日よろしくお願いしますわ」
校長秘書の無敵の微笑みを目の当たりにし、エステルは反射的に頷いた。
(ど、どうしよう・・・・・・て、いうか、どうしてあたしなんかが・・・・・あたしなんかでいいんだろうか・・・・・・)
【1時間目、社会:レオン・ガルシア先生】
「よぉ、おはようさん。朝からシケた顔してんじゃねぇぞ」
にぃっ
浅黒の巨漢レオンは、本日も、朝イチには絶対に拝みたくないような胸毛を全開にして、生徒たちに笑いかけた。
「じゃあ、早速授業だ。今日は、世界経済の話からだったな」
豪快に教科書を開くと、その大きな身体からは想像もできないような、難しい単語を連発し出した。
レオン先生の話は、意外に面白い。退屈な覚え仕事だと思われそうなこの教科も、彼からすれば、教室にいながらできる社会勉強のようなものなのだという。
ただ、何でも教師はあくまで副業で、本業は解体屋なんだとか。そのあたり、極めてアヤシい先生だ。
「ところで・・・・・・」
突然、先生の声が間近で聞こえてきたので、エステルはぎょっとした。
一体いつの間に来たのだろう?気付けば彼は、エステルと、彼女の友人ロレッタのすぐ隣にいた。
そして、彼はおもむろにロレッタの手をとると、
「前から気になってたんだが、君、可愛いね。よかったら、このあと俺の個人指導受けてみな・・・・・・」
「ぬわぁにやってんですかっ!」
その瞬間、気配を消して取材を続けていたケイトが、これまた突然、二人の間に割って入ってきた。その顔を見るなり、まるでネコにあった鼠のごとく、飛びのくレオン。
「げっ、いたの?ケイトちゃん?」
「“いたの?”じゃありません!このエロ教師!ぬわぁに自分の生徒を誘惑してるんですのっ?!」
「いや、俺はただ教師として勉強を・・・・・・」
「言い訳なんて無用ですわっ!この件は、スフォルツァ校長にもしっかり報告させていただきます」
「あっ!それだけは勘弁してっ!ケイトちゃんっ!」
【2時間目、体育:モニカ・アルジェント先生】
(・・・・・・朝から運動は、正直キツイ・・・・・・)
楕円形の運動場トラックを走りながら、エステルは呟いた。もう、走り出してから軽く10週はした気がする。しかし、日頃より超スパルタで知られるこの女教師は、一向に終わらせてくれない。
それどころか・・・・・・
「そこぉ!チンタラ走ってんじゃないよ!今度手ぇ抜いたら――」
ニヤリ
妖艶な笑みが、ナイスバディの美女の顔に拵えられた。
「あんたら全員、容赦しないからね」
隠し持っていたらしい愛用の短剣(チンク・エデア)まで取り出されたのでは、たまったものではない。彼女たちの心に、なけなしのやる気が湧き起こった。
と、そのとき、そこに飛び出してきたのは――
「この学校内で、卿が武器を携帯することは禁止されている。もう何度も、スフォルツァ校長から厳重注意を受けているはずだ、モニカ・アルジェント」
抑揚のない口調で警告してきたのは、警備員のトレス・イクスだ。
「おや、やろうってのかい、おちびちゃん」
挑発的な態度を見せるモニカの前に、トレスは拳銃を突き付けた。
・・・・・・校内で拳銃ですか、警備員さん・・・・・・っ!
【3時間目、理科:ウィリアム・ウォルター・ワーズワース先生】
「よし、今日は教科書127ページ、チオアルデハイドのもたらす溶血効果についてだ。ちなみに私は、過去に催涙ガスを利用して猛犬を撃退したことがあるのだが、それにはこの溶血効果が関係し・・・・・・」
面長の顔を得意げに歪めると、いかにも学者風のこの中年男は、自身の英雄談を朗々と語り出した。
その内容は、最初でこそ理科の話だったかもしれないが、すぐに彼の体験自体にすりかわっていった。
(うわ・・・・・・また話が長くなりそう)
エステルは心の中で、こっそりため息をついた。
ワーズワース先生は、話は面白いのだが、いつも話し出すと止まらないのだ。授業などすっかり忘れて、一時間まるまる雑談で終わったこともある。
雑談の突入に喜ぶ者、勝手に予習を始める者など、各々動きを見せる中。
「先生」
おもむろに、隣のロレッタが高々と手を挙げた。
「何だね、ロレッタくん」
話を止めて彼女に目をやったワーズワースに、彼女は突拍子もない質問を浴びせた。
「理科室の黒板の裏に隠し部屋があるって、ホントですか?」
「声が大きいぞ!校長に内緒なんだから、噂は広げないでおくれよ!!」
「は、はぁ・・・・・・」
・・・・・・あっさり認めたな・・・・・・
あからさまに慌てる先生を目の当たりにして、誰もが心の中でそう思った。
奥の実験室で、こっそりはた迷惑な研究を続けるワーズワース先生に、幸あれ。エィメン。
【4時間目、技術:ピエトロ・オルシーニ先生】
「よし、汝らに今日製作してもらうのは、この椅子だ!」
ドォンっ!
“壊滅教師”のあだ名をもつこのペテロ先生が、勢いよく完成品の椅子を教卓にたたき付けると、バリバリっという音がして、教卓に綺麗な一本のヒビが入った。
――そして、その瞬間。
ガラガラっ!
「また君か!ペテロくん。そんなに学校の備品を壊して、何が楽しい?」
勢いよくドアを開けて入ってきたのは、用務員のユーグ・ド・ヴァトーだった。
手にした木刀を首元に突き付けられ、ペテロは慌てて降参のポーズをとった。
「ま、待て・・・・・・某は何も、わざとやったわけではないのだ・・・・・・し、しかし・・・・・・おぉっ!まさかこんなところにヒビが入るとは、ペテロ、一生の不覚っ!」
***ランチタイム***
【5時間目、神学:マタイ先生】
「ですから、このとき主は・・・・・・」
学校一のリアリストで有名なマタイ先生は、主のお言葉を朗々と読み上げ、空々しく感嘆した。
今日も朝から、校庭に新たに建設予定となっている、新教皇アレッサンドロの銅像について、経費の無駄使いだと散々スフォルツァ校長を皮肉ってきたらしいのだが、その同じ口が、午後からは神学を教えるというのだから呆れる。
そして、それを知っているからか、この授業に対する生徒の関心はかなり薄い。
(・・・・・・この時間って、一番眠いのよね・・・・・・)
ため息をつきながら、エステルは隣のロレッタを見た。
ぐ~ぴ~
(・・・・・・隣でロレッタは寝てるし)
「そこ」
すると、マタイ先生がエステルとロレッタに静かな声を向けた。
「少し授業態度が悪いようですね。罰として、全員に、新約聖書ルカ篇第3章から最後までの書き写しを課します」
そのあまりの分量に、生徒たちは不満の声をあげた。
しかし。
「問答無用です、みなさん。責任はそこの二人にあるのですよ。
それに、いい機会ではないですか。普段はあまり触れられない主のお言葉を、間近で知る絶好のチャンスです」
ほとんど閉じられたマタイ先生の目が、さらに細められた。
【6時間目、保健:ノエル・ボウ先生】
(・・・・・・っていうか、一日になんで保健と体育が両方・・・・・・)
さすがの6コマ目に、エステルがうんざりしていると。
「エステルさん」
「は、はい!」
「よそ見はいけないわね。注意散漫なのが顔に出ているわ」
校内の保健医を兼ねるこの美人教師は、ウェーブのかかった髪をかき上げると、エステルをまっすぐ見据えて言った。
「そんな態度、意中の相手の前で見せたりしたら、あなたすぐに嫌われてしまうわ。気をつけて」
魅惑の微笑みに、一瞬にして室内の生徒たちは骨抜きにされた。まさに、イチコロってやつだ。
「おねぇさまぁ~」
隣でロレッタが声を上げるのが聞こえた。
ようやく、全ての授業が終わった。
(・・・・・・こんなので、本当によかったのかしら・・・・・・)
エステルが、背後の記者にどこか申し訳ない思いを感じていると。
「エステルさん」
「は、はい!」
突然背後の記者――ケイトによばれ、彼女はびくりとした。
「今日は一日お疲れ様でした。おかげさまで、随分といいデータがとれましたわ」
「・・・・・・はぁ。それはよかったで・・・・・・」
「あのエロ教師は減俸。モニカ先生には、カテリーナさまの方から、もう一度きちんとお叱りいただかねば。ワーズワース先生は、ご自分の実験室をそんなところに隠していらしたなんて。それから・・・・・・」
「あ、あのっ!」
エステルは、思わずケイトの独り言を遮って問い掛けた。
「今日のは、パンフレット制作のための取材じゃ・・・・・・」
すると。
「ええ。本当に、エステルさんには感謝してますわ。ご協力どうも」
天使のような罪のない顔で、ケイトは笑った。
「い、いえ・・・・・・」
その迫力に、今更震え上がってしまった、エステルだった。
優雅なる聖トリニティ・カレッジの火曜日
~被害者は果たして誰か~
~被害者は果たして誰か~
はい、トリブラ学園編でした。
“学園編”というと、「もしやあのアベルやカテリーナさんやトレスくんが、学生!?」などと思われたかもしれませんが、ごめんなさい。
残念ながら、学生なのは約二名だけです;
ほとんど、年齢どおりの教師だったり。いや、それどころか、教師じゃない人も若干いちゃったりなんかして。
とりあえず、いろいろ遊んでみました。
こんな教師、いいな、とか、絶対やイヤだな、とか・・・・・・
ちなみに、教授ことワーズワース博士は、実際に原作でも教鞭をとっていらっしゃいますが、
たぶん理科じゃないです;
っというか、聖職者のための学校なのに、教科が神学以外、普通・・・・・・ってツッコミは、なしですよ☆みなさま★
ではでは、今度はまた、真面目な方の(笑)トリブラで。
慧仲茜♪
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